東京藝術大学大学美術館で開催されている『藝大式 美術の“ミカタ” ―この夏、藝大生になる―』に行ってきました。
美術館では、完成した作品を見て「きれい」「好き」「少し難しい」と感じて終わることも少なくありません。私自身も、キャプションがない作品は背景を詳しく知らないまま、第一印象を中心に鑑賞することがあります。
今回の展覧会は、そんな普段の鑑賞とは少し違いました。展示室を歩きながら、東京藝術大学の講義を一日だけ受けているような感覚で、美術の歴史や制作技法、保存修復、作品との向き合い方を学べます。
今回の展示に訪れた理由は美術について少し勉強したいと思ったのと藝大に行ってみたいと思ったからです。私は漫画の『ブルーピリオド』が好きなので、聖地巡礼的な理由も入っています。
『藝大式 美術の“ミカタ”』とは
『藝大式 美術の“ミカタ”』は、2026年から2028年まで、3年にわたって毎夏開催されるシリーズ企画の第1回展です。東京藝術大学の現役講師陣による12の「講義」を、美術館の展示として体験できる構成になっています。
講義のテーマは、油絵や絵巻の模写、日本近代美術史、仏像の保存修復、動物を題材にした鑑賞、藤田嗣治の学生時代、ゴッホが使用したプレス機などさまざまです。東京藝術大学が所蔵する作品や資料を教材にしながら、作品を見るための視点を少しずつ増やしていける展覧会でした。
通常の展覧会では、作家や時代ごとに作品を追うことが多いですが、本展では展示室が「1限目」「2限目」と講義のように分けられています。タイトルだけを見ると難しそうな講義もありますが、実物の作品や映像、無料の音声ガイド、体験展示を通して学べるため、専門知識がなくても入りやすい内容です。

見るだけでは分からない制作の過程を学べる
特に面白いと感じたのは、完成した作品だけでなく、「どのように学び、作り、残していくのか」に目を向けているところです。
模写という言葉には、元の作品をそのまま写すイメージがありました。しかし、筆の動きや色の重なり、構図を実際にたどることは、作者がどのように作品を組み立てたのかを考える行為でもあります。
油絵や古典絵巻の模写を扱う展示からは、作品をよく見ることと、手を動かして理解することがつながっているように感じました。
また、仏像の保存修復を学ぶ講義では、文化財を未来へ残すために、外から見ただけでは分からない調査や技術が必要であることを知ることができます。本展では、快慶の《大日如来坐像》と、その技法を研究するために制作された模刻を通して、保存修復について学べる構成になっています。
美術館で作品を鑑賞できること自体が、多くの人の研究や地道な作業によって支えられているのだと気付かされました。
学生が国宝絵巻を写し取る(上げ写し)映像では1日に500円玉程度しか進まないという話があり、自分には真似できないと思い、美大生のみなさんへの尊敬が高まりました。

特に印象に残った講義
まず今回の美術館の展示として出された12の講義は下記となります。

これらの中から特に印象に残った講義について書いていきます。
1限 絵画基礎演習
本展示のはじめに見ることができた黒田清輝のレンブラント作品の模写をみてびっくりしました。レンブラント作品は2作ありました。1作品目は『トゥルプ博士の解剖講義』です。

2作目は『羽根帽子をかぶった自画像』です。模写の作品に他人であるレンブラントの自画像を選んでいることで、黒田清輝がレンブラントの作品から学ぼうとする意識を強く感じました。
5限の学生の国宝絵巻の模写でも思いましたが、1限目「絵画基礎演習」に付けられた講義タイトルのまねぶ美術館にぴったりだと強く感じました。いままで模写を学ぶためにやっている理解が薄かったので、学ぶためにやっていることだという価値観を得ることができてうれしかったです。
また学生さんが模写しているところも見れたため貴重な体験をすることができました。
そのため、1限の絵画基礎演習が印象に残っています。
8限 クリエイティブ・アーカイヴ演習
8限のクリエイティブ・アーカイヴ演習もとても印象に残りました。この講義ではVRゴーグルをつけて同じ素材のものを触り、実際に作品を触っている感覚になれる体験ができました。
またその作品を見た感想、触った感想などのアンケートがありました。
私が答えたアンケートはこちらの作品です。


こちらの作品をみて思った単語を2から5個回答するというアンケートとなっていました。
私が答えたキーワードは暗くて見えづらいですが、2枚目の中央に書かれている「蜂」、1枚目が人の上半身のように見えたため「身体」、素材の「つるつる」、模様の「しましま」を答えました。
結果は・・・

こちらの結果でした。しかし、他のアンケートの答えを見ると結構自分視点のみで多角的に作品を見れていないということが表された結果のように感じました。
他の人のキーワードがモニターに映し出されていましたが、「対称」や「冷たい」など全く考えていなかったのでもっと多角的に見る必要があると思いました。
この結果から、自分の見方の偏りを実感したことから8限 クリエイティブ・アーカイヴ演習が印象に残りました。
展覧会を通して変わった美術の見方
美術鑑賞というと、作者の意図や美術史上の意味を正しく理解しなければならないように感じることがあります。しかし、本展を回って感じたのは、知識は感想を正解に近づけるためのものではなく、作品を見る入口を増やすためのものだということです。
最初は「かわいい」「不思議」「少し怖い」といった単純な感想でも、そこから素材や時代、作者の経歴に目を向けることで、作品との距離が少しずつ縮まっていきます。
実際に本展の「特別鑑賞演習」では、動物をモチーフにした作品を「かわいい」という素直な感覚から見始め、表現の意図や制作当時の文化へと関心を広げる鑑賞方法が紹介されています。

自分の第一印象を大切にしながら、解説を読んでもう一度作品を見る。その往復でさらに美術鑑賞が楽しめるようになるのかなと思います!
まとめ
『藝大式 美術の“ミカタ” ―この夏、藝大生になる―』は、東京藝術大学の貴重なコレクションを楽しみながら、美術の見方を学べる展覧会でした。
有名な作品だけを目当てに訪れる展覧会とは違い、模写、保存修復、美術史、鑑賞方法など、普段は意識しにくい部分に光が当てられています。そのため、美術館によく行く人はもちろん、「作品のどこを見ればよいか分からない」と感じている人にも向いていると思います。
気になった講義を丁寧に見て、自分なりの発見を一つ持ち帰るだけでも、次に美術館へ行ったときの作品の見え方が変わるはずです。
私自身も今回の展覧会を通して、作品の完成形だけでなく、制作方法や学びの積み重ね、作品を未来へ残す人たちの仕事にも目を向けてみたいと思うようになりました。
私は今回平日の昼頃に行ってそんなに混んでいなかったため平日の昼に行くのはおすすめです。
とても格安の授業だったため来年のシリーズ企画にも参加したいと思います。



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