【オペラ「運命の力」感想】新国立劇場で鑑賞|“運命”が呪いにも感じられた悲劇

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2026年9月5日、新国立劇場 オペラパレスで上演された東京二期会オペラ劇場『運命の力』を観てきました。

『運命の力』は、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕のオペラです。

今回の公演では、レオノーラを大村博美さん、ドン・カルロを今井俊輔さん、ドン・アルヴァーロを樋口達哉さんが演じ、東京フィルハーモニー交響楽団による演奏とともに物語が進んでいきます。

私がオペラを観るのは今回が2回目です。

まだオペラに詳しいわけではありませんが、前回に続いて今回も最後まで楽しむことができました。

今回は『運命の力』を観て感じたことを、特に印象に残った登場人物たちの「家」への考え方や、タイトルにもなっている“運命”について振り返ります。

『運命の力』は一つの事故から始まる悲劇

物語の中心となるのは、レオノーラと恋人のドン・アルヴァーロ、そしてレオノーラの兄であるドン・カルロです。

レオノーラとアルヴァーロは駆け落ちをしようとしますが、レオノーラの父であるカラトラーヴァ侯爵に見つかってしまいます。

アルヴァーロは戦う意思がないことを示そうと銃を投げ捨てますが、その銃が暴発。

その弾によってレオノーラの父親が命を落としてしまいます。

この偶然の事故をきっかけに、登場人物たちの人生が大きく狂っていきます。

タイトルにある「運命」という言葉の意味が、物語が進むにつれてどんどん重くなっていく作品でした。

父親の最期に感じた「娘よりも家を優先する悲しさ」

序盤で特に印象に残ったのが、レオノーラの父親が亡くなる場面です。

銃の暴発による事故で致命傷を負った父親は、死の間際にレオノーラへ恨みの言葉を残します。

この場面を観ていて、私は少し悲しい気持ちになりました。

自分の娘が目の前にいるにもかかわらず、最後まで娘の幸せより「家」や「家名」を大事にしているように見えたからです。

もちろん、当時の社会では家柄や身分が現代以上に重要だったのだと思います。

それでも、もうすぐ自分が死ぬという瞬間にまで娘を責め続ける姿を見ると、「最後くらい娘のことを思ってあげてもいいのではないか」と感じてしまいました。

ここから始まる悲劇を考えると、父親の死そのものだけでなく、この最後の言葉もまたレオノーラや兄のカルロを縛り続けたのではないかと思います。

ドン・カルロもまた家に縛られた人に見えた

物語の中でもう一人印象に残ったのが、レオノーラの兄であるドン・カルロです。

カルロは父親の死をきっかけに、妹とアルヴァーロへの復讐を誓います。

しかし物語の途中では、カルロとアルヴァーロはお互いの正体を知らないまま出会い、戦場で友情を築きます。

ここが個人的にはかなり悲しい部分でした。

せっかく友人になり、相手を一人の人間として信頼する関係になったのに、アルヴァーロの正体を知った瞬間、カルロは再び復讐を優先します。

友として過ごした時間よりも、父親や家の名誉を優先してしまう。

その結果、かつて友人だったアルヴァーロを恨み続け、最後には自分の妹であるレオノーラまで手にかけてしまいます。

もちろんカルロ自身が選んだ行動ではあります。

それでも見ていると、単純な悪役というより「家の誇りに縛られてしまったかわいそうな人」に感じました。

父親から始まった「家を守る」という考え方が、そのまま兄にも引き継がれ、それによって家族全員が不幸になっていくようにも見えます。

もしカルロが途中で復讐をやめることができていたら。

アルヴァーロと友人になった経験をきっかけに、父親の死を過去のものにできていたら。

そんなことを考えてしまいました。

生の歌声とオーケストラは今回も迫力があった

今回が2度目のオペラ鑑賞でしたが、やはり生で聴く歌声には独特の迫力があります。

大きな劇場の中に出演者の声が響き、それに東京フィルハーモニー交響楽団の演奏が重なることで、物語の感情がより強く伝わってきます。

特に『運命の力』は、復讐や後悔、悲しみといった強い感情を持つ登場人物が多いため、オペラという表現方法との相性がとても良い作品だと感じました。

台詞として聞けば短い感情でも、歌になることで長く、そして強く伝わってきます。

オペラにはまだ2回しか行っていませんが、どちらも物語として面白く、「難しそう」という最初の印象よりもかなり楽しめています。

作品ごとに音楽や舞台の雰囲気も大きく違うと思うので、今後も気になる作品があれば観てみたいです。

「運命の力」は幸せなら嬉しく、悲劇なら呪いにもなる

観終わったあと、一番考えたのはやはりタイトルにもなっている「運命の力」についてでした。

運命という言葉は、普段なら良い意味でも使われます。

偶然出会った人と仲良くなったり、思いがけない出来事から人生が良い方向へ進んだりすれば、「これは運命だったのかもしれない」と嬉しく感じます。

しかし『運命の力』で描かれている運命は、その反対です。

偶然起きた銃の暴発。

戦場で偶然出会ったアルヴァーロとカルロ。

そして、離れていた登場人物たちが最後には再び同じ場所へ集まっていく。

もし起きる出来事が幸せなものなら「運命」という言葉はとても素敵です。

しかし、悲しい出来事ばかりが偶然とは思えないほど重なっていくと、それは運命というよりも「呪い」のように感じます。

誰か一人が少し違う選択をしていれば、結末は変わっていたかもしれません。

それでも、それぞれが家や復讐、過去への後悔に縛られたことで、悲劇から逃れることができませんでした。

観終わったあとにタイトルの意味をここまで考えさせられたことも含めて、『運命の力』は印象に残る作品でした。

最後に

『運命の力』は、家族や恋愛を描いた物語でありながら、「家の名誉」「復讐」「運命」といった重いテーマが絡み合うオペラでした。

私は特に、父親と兄のカルロが娘や妹本人よりも家の誇りを優先してしまう姿が印象に残っています。

その選択によって誰も幸せになっていないからこそ、観ていて余計に悲しく感じました。

また興味を持ったオペラ作品があれば、劇場まで観に行ってみたいと思います。

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