SOMPO美術館「ウジェーヌ・ブーダン展」感想|モネに影響を与えた印象派の始まりを感じる空と光の展覧会 

美術

「ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」は、鑑賞中ずっと「空ってこんなに表情があるんだ」と感じる展覧会でした。

ブーダンといえば、印象派の先駆者、モネに戸外制作の大切さを伝えた画家、というイメージが強いかもしれません。
私はモネが好きなので、「モネにつながる画家として見ればいいのかな」くらいの気持ちで行きました。

ただ、実際に見てみると、ブーダンの魅力はそれだけではありませんでした。
海、空、雲、風、港、道、そこにいる人々。大きな事件が起きているわけではないのに、画面の中に“その日の空気”が残っている感じがします。

今回の記事では、まず展覧会のざっくりした概要をまとめたあと、個人的に印象に残った3作品について、感じたことを書いていきます

「ウジェーヌ・ブーダン展」とは

「ウジェーヌ・ブーダン展―瞬間の美学、光の探求」は、東京・新宿のSOMPO美術館で開催されている展覧会です。

ウジェーヌ・ブーダンは、1824年にフランスの港町オンフルールで生まれた画家です。海や空、港町の風景を多く描き、若き日のクロード・モネにも大きな影響を与えた人物として知られています。

今回の展覧会では、油彩、素描、パステル、版画などを中心に約100点が紹介されていて、ブーダンの画業を幅広くたどることができます。

個人的に面白かったのは、ただ「海の絵がきれい!」で終わる展示ではなかったところです。
もちろん海景画は大きな見どころなのですが、それだけでなく、「空」「風景」「建築」「動物」「人物」「素描」「版画」など、いろいろな切り口からブーダンの作品を見ることができます。

見ているうちに、ブーダンは風景を“景色”として描いているというより、その場に流れている時間や空気をつかまえようとしていた画家なのかなと思いました。


個人的に印象に残った作品

トルーヴィル街道、ビュタン近郊

まず印象に残ったのが、「トルーヴィル街道、ビュタン近郊」です。こちらは確か撮影禁止エリアだったためポストカードの写真となります。

この作品は、海や港の絵とは少し違って、道のある風景が描かれています。
派手な場面ではないのですが、だからこそ目が止まりました。

道が画面の奥へと続いていて、そこに人や自然の気配がある。何か特別な出来事が起きているわけではないのに、「この場所に風が吹いているんだろうな」と想像できるような絵でした。

ブーダンというと、どうしても空や海のイメージが強いですが、この作品を見ると、地面や道、木々の描き方にもちゃんと視線が向いていることがわかります。

個人的には、モネのように光が溶けていく感じとはまた違って、もう少し“その場所に立っている感覚”が強い絵だと思いました。
鑑賞している側の目が、自然と道の奥へ奥へと進んでいく。風景の中に入っていくような感覚がありました。


ベルク、出航

次に印象に残ったのが、「ベルク、出航」です。

これはかなり好きでした。また、ブーダンの絵というイメージが強い絵だと思っています。
タイトルに「出航」とある通り、海へ向かっていく力強さがある作品です。

まず目に入るのは、波と空の迫力です。海は静かなだけではなく、うねりがあり、風があり、少し不安定なものとして描かれています。
そこに船が出ていくことで、画面全体に緊張感が生まれていました。

「出航」という言葉は前向きな響きもありますが、同時に少し怖さもあります。
これから進んでいく先に何があるのかはわからない。でも、それでも船は海へ出ていく。

その感じが、絵の中の空模様や波の動きと重なって、ただの海景画ではなく“出発の瞬間”を見ているようでした。

ブーダンの作品は、空や海を描いているのに、どこか人間の気持ちも一緒に描いているように感じます。
この作品も、自然の大きさと、その中へ進んでいく人間の小ささが同時に伝わってきて、かなり印象に残りました。


嵐(ヤーコプ・ファン・ロイスダールに基づく)

最後に挙げたいのが、「嵐(ヤーコプ・ファン・ロイスダールに基づく)」です。

この作品は、ブーダンの後の作品を見たあとに振り返ると、かなり面白く感じました。
ブーダンといえば、軽やかな筆致や、移ろう光をとらえる画家というイメージがありますが、この作品にはそれとは違う重さがあります。

画面全体に嵐の気配があり、空も海も落ち着いていません。
ただ美しい風景というより、自然の怖さや大きさを正面から見ているような作品でした。しかし、真ん中の雲間の明るさに目を惹かれて選びました!

この作品が印象に残ったのは、後のブーダンの“空を描く力”の始まりのようにも見えたからです。
後年の作品では、空や雲がもっと軽く、もっと瞬間的に描かれているように感じましたが、この作品には、まず自然をじっと観察し、過去の画家から学ぼうとする姿勢が見えます。

最初から自由に描いていたのではなく、学びの積み重ねがあって、そこからブーダンらしい光や空気の表現に向かっていったのだと思うと、この一枚の見え方も変わりました。

展覧会の序盤で見る作品としても、とても良かったです。
ここからブーダンがどう変わっていくのかを考えながら見ると、展示全体の流れがより面白くなります。


最後に

今回の「ウジェーヌ・ブーダン展」は、思っていた以上に“空を見る展覧会”でした。

海や港の絵はもちろん印象に残るのですが、それ以上に、雲の動きや光の変化、空気の湿度みたいなものが記憶に残ります。
写真で見ると一枚の風景画でも、実際に作品の前に立つと、画面の中の時間が少しずつ動いているように感じました。

モネや印象派が好きな人はもちろん楽しめると思います。
ただ、それだけではなく、「風景画って少し難しそう」と思っている人にもおすすめしやすい展覧会でした。

大きな物語を追うというより、空や海の一瞬に立ち止まる。
そういう静かな楽しさがある展示です。

6月21日まで開催しているので皆さんもぜひ行ってみてください!

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